本店/ラボ スーシェフ 中野 心悟
この春、ボワを卒業いたします。
10年・・・。入社した頃のことを思うと、遠い昔のようにも感じ、ついこの前のようにも感じる。そんなありきたりな言葉でしか表現できませんが、ふり返るといつもそう思います。
入社した小僧の頃は、変な田舎コンプレックスみたいなものがあり、北海道のど真ん中から出てきた自分には奈良西大寺の町ですら都会に感じました。そして、本州の人間には負けたくないといつもそう思っていました。今だから笑えますが、本当にそう思っていました。
さらに、自分がいないと会社が困るって思わせるまでは辞めないとも思っていました。本当に思い上がりも甚だしいのですが、「役に立ちたい」では物足りなかったのだと思います。きっとシェフに認められたかったのだと思います。
そんな決意も時が経てば変わり、仕事の厳しさから「辞めたい」と思った事も正直少なくありませんでした。ただ、逃げるのは嫌だったので頑張った、それだけかもしれません。決して手先が器用ではなく賢くもない自分を、見離さず、あたたかくそして厳しく見守ってくれたシェフには、本当に何とお礼を言っていいか分かりません。どの言葉も安っぽくなりそうで、感謝をお伝えするよい言葉が思いつきません。きっと自分が一人前に店を持ち、頑張っている姿を見せる事が、一番の恩返しだと思っています。
本当にたくさんの思い出がありすぎて、なんだか「ボワ」が自分の実家のように感じます。恥ずかしいのであまり言いたくはありませんが、正直さみしくて仕方ありません。
これから「ボワ」の屋台骨となっていく若いスタッフに言い残す言葉があるとしたら、決して「自分のようになれ」ではありません。ただ「一生懸命やること」。それだけです。「一生懸命やる」素晴らしさに気づいてほしい。カッコつけたいとか、努力することが恥ずかしかったり、無駄に感じたりすることもあると思いますが、決してそんな事はありません。一生懸命頑張り、もがく姿は素晴らしいと思います。
そしてそんな人間が集まる「ガトー・ド・ボワ」であってほしい。自分の実家は、そういう場所であり続けてほしいと思います。
最後に、ボワを愛してくださるすべての皆様に、心からの御礼を申しあげます。
ありがとうございました。
本店/ラボ スーシェフ 中野 心悟